秋の黄葉


 

 ロシアの短い秋はとても美しく魅力的です。
 ロシアの誇り、現代ロシア語の祖、愛すべき国民詩人と称えられる18世紀〜19世紀の詩人アレクサンドル・プーシキンがなぜこの季節を“黄金の秋”と称したのか、秋のロシアを訪れればきっとわかることと思います。
 
 日本の秋の山は燃えるような紅葉が特長と言えますが、ロシアの秋の木々はその葉を山吹色に染めるのです。大陸の抜けるような青空に伸びる枝々に揺れる黄葉が涼やかな風にさらわれて宙を舞う美しさは筆舌に尽くしがたいものであると思います。
 夏の暑さが去り風が涼しくなり、けれどまだ日は高く町歩きに適したこの時期は、ただあてどもなく散歩をしているだけでも時間を忘れてしまうことでしょう。
 
 日本でも秋が始まってから盛夏の熱気が1日2日戻ってくることがあると思いますが、ロシアではそんな日のことをおばあちゃんの夏(бабье лето)と呼んでいます。英語で言うところのインディアン・サマーですね。日本語の小春日和と意味が近いですが、どこか情熱的にも牧歌的にも取れて、私が好きな言葉の一つです。

 

(M.K 2017)